水源環境保全について_1
 地球環境をいかに保全するか、大きな課題であるが、いま神奈川県でも大きな論議になっている、水源環境保全などについて、環境先進国ドイツを視察してきました。
地下水が原水!
 最初の訪問先は、フランクフルトから南に約50km、ヘッセン州ビュアシュタット市。エネルギー供給会社「EWR」社が経営する水道水の製造・供給工場、いわゆる浄水場、その名もビュアシュタット水工場。アウトバーンを出て、まっ平らな田園地帯をしばらく走ると、雑木林の茂る一帯があり、そのなかに目指す浄水場はあった。敷地内には森が広がり、小さなお城のような社屋が建っている。全体に小ぢんまりとしていて、村の学校のような風情である。
 水の「マイスター」ハンスさんにお話を伺う。専門技能を高く評価するドイツには、さまざまな職種にわたって「マイスター制度」が適用されているが、「水」にまでそれがあった。この浄水場は、2005年で、操業開始から100周年を迎える。EWR社とライン川をはさんで対岸に位置するラインラント・プファルツ州ヴォルムス市が出資をして設立した。ヴォルムスまではライン川の水底に渡したパイプラインを使って水を送るほか、隣接するランパートハイムなどと、合わせて十一万六千三百人の市民に、水道水を提供している。ドイツでは、基本的に水道の原水を河川から直接、取り込むことはしない。井戸を掘って汲み上げるのである。ここでも、浄水場周辺の保護林に設置した8か所の井戸を使って、135mの地下から水を汲み上げている。ビュアシュタットの東に広がるオーデンヴァルトの森林地帯は、標高こそ最高で626mに過ぎないが、広葉樹を中心とした豊かな混交林が特徴だ。そこに貯えられた水は伏流水となってライン川を目指す。一方で、保護林じたいにも雨や雪が降るから、その下は地下水の巨大なタンクになるのだ。
厳重に守られる水源林!
 地下水と聞くと、すぐに地盤沈下を連想しがちだが、ドイツの場合は国土が比較的平坦なことから日本のような人口集中が起きないため、心配ない。ただし、一度、汚れてしまうと、河川と違って水の流れがゆっくりの地下水は、汚染が長く続いてしまう。だから、水源林(保護林)は厳重な管理下に置かれている。井戸の周辺十m以内(ZONE1)は立ち入り禁止、ZONE2と呼ばれる水源涵養区域は自動車の進入禁止、保護林に隣接する区域(ZONE3)でも汚染源となるような施設の建設は制限されている。その管理には、森林監督官(ドイツ人あこがれの職業!)も一役買っているのだという。  
 工場のような、浄水場の建物内は、汲み上げられた水がカーテン状の滝となって落ちるシャーッという音だけが響いている。地下水には鉄イオン、マンガンイオンが多く含まれているが、それらを空気中の酸素と結合させて除去する。いわば、水の空気洗浄である。それから、沈殿槽や特別なフィルターなど、全工程3日間という超低速ろ過によって磨かれ、飲料水が生まれる。口当たりは極めてやわらかく、雑味もない。冷やしてもいないのに、とても美味しい。今は送水の際、殺菌のために亜塩素酸ナトリウム+塩素を1リットルあた0.2mg含ませているが、1980年までは、それも必要なかったとのこと。もともと、地下水は河川などの水より清潔なので、浄水もシンプルで済むのだろう。浄水の過程で出来た“汚れを含んだ水”は、ふたたび森に還され、地下水の素となる。鉄やマンガンの「滓」は約2年間、保存されたのち石灰を混合、プレスされて、瓦や防音壁などの建設用資材として活用される。
■ドイツの水道料金は高い!
 この「おいしい水」が、いくらで売られているのかというと、1tあたり1.7ユーロ(約230円)。これは、ドイツでは安目の設定らしい。ベルリンなど大都市では、もうすこし高くなる。ちなみに平成十五年度の内閣府調査によれば、仮に上下水道とも1か月20t使用したとして、ベルリンの上水道料金は東京の約2倍、下水道料金では約3.8倍に達するとのこと。